「終活?それは妻がやってくれるだろう」——そんなふうに考えていませんか。
実際、終活に関する各種調査では、終活に取り組んでいる男性の割合は女性の半分以下という結果が多く見られます。家計管理や保険の手続きを配偶者に任せてきた方ほど、「自分がやらなくても大丈夫」という感覚を持ちやすいものです。
しかし、男性の終活とは、自分名義の財産やデジタル資産を家族がわかる状態に整えておくことです。妻に任せきりにしていると、万が一のときに「口座がどこにあるかわからない」「ネット証券にログインできない」といった問題が発生し、家族に大きな負担をかけることになりかねません。
この記事では、男性が主体的に終活に取り組むべき理由と、具体的な始め方を解説します。
男性が終活を先延ばしにしがちな理由
終活に対する意識は男女で大きく異なります。男性が終活を後回しにしてしまう背景には、いくつかの共通した傾向が見られます。
| 先延ばしの理由 | 背景にある意識 |
|---|---|
| 「まだ元気だから」 | 健康への過信、自分事として捉えにくい |
| 「死の話は縁起が悪い」 | 感情に向き合うことへの抵抗感 |
| 「妻がやってくれるだろう」 | 家庭内の役割分担への依存 |
| 「何をすればいいかわからない」 | 情報に触れる機会が少ない |
| 「仕事が忙しい」 | 退職までプライベートの整理に手が回らない |
特に注目したいのは、**「何をすればいいかわからない」**という声です。終活は女性向けの情報が多い傾向にあり、男性向けに整理されたガイドが少ないことも先延ばしの一因になっています。
しかし、ここで考えてみてください。銀行口座、証券口座、不動産の登記情報、会社の退職金——これらの多くは夫の名義です。その情報を夫自身が整理しなければ、誰が整理できるのでしょうか。
男性が終活をしないと家族が困ること
財産の全体像がわからない
夫名義の財産は、本人にしかわからないことが少なくありません。特に以下のようなケースでは、妻が困るリスクが高まります。
- ネット証券やネット銀行の口座:通帳や郵便物がなく、存在自体が把握されない
- 退職金の運用先:定期預金、投資信託など、どこに移したか本人しか知らない
- 暗号資産やFX口座:家族がまったく知らないまま放置されるケースがある
- 貸金庫:鍵と契約先が不明で開けられない
銀行口座の相続手続きでも解説していますが、口座の存在がわからなければ手続きすら始められません。
デジタル遺品がブラックボックスになる
男性はデジタルサービスを単独で利用していることが多く、デジタル遺品がブラックボックス化しやすいという特徴があります。デジタル遺品とは、故人が利用していたデジタルサービスや端末に残されたデータのことです。
- パソコンやスマートフォンのログインパスワード
- クラウドストレージに保存されたデータ
- 有料のサブスクリプション契約
- 仕事で使っていたメールアカウント
- ポイントやマイル
デジタル遺品の放置は、解約されないサブスクリプションによる不要な支払いの継続や、個人情報の漏洩リスクにもつながります。
妻に「二重の負担」がかかる
日本人男性の平均寿命は女性より約6年短いとされており、統計的に妻が先に残される可能性が高くなります。夫が終活をしていなければ、妻は悲しみの中で、夫の情報を一から調べる作業を強いられることになります。
相続手続きの期限は待ってくれません。相続税の申告は死後10か月以内、相続放棄の判断は3か月以内です。情報が整理されていない状態では、これらの期限に追われながらの手続きとなり、精神的にも実務的にも大きな負担がかかります。
男性の終活でやるべきこと5つ
男性の終活は、難しいことから始める必要はありません。以下の5つのステップで、無理なく進めていきましょう。
1. 財産の棚卸しをする
最初にやるべきことは、自分名義の財産をすべて書き出すことです。以下の表を参考に、漏れなく洗い出しましょう。
| カテゴリ | 具体例 | 確認すべき情報 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 銀行・郵便局の口座 | 金融機関名、支店名、口座番号 |
| 有価証券 | 株式、投資信託、債券 | 証券会社名、口座番号 |
| 不動産 | 自宅、土地、別荘、収益物件 | 所在地、登記情報 |
| 保険 | 生命保険、損害保険、共済 | 保険会社名、証券番号、受取人 |
| 年金 | 公的年金、企業年金、iDeCo | 基礎年金番号、運営管理機関 |
| ローン・負債 | 住宅ローン、カードローン | 借入先、残高、団信の有無 |
| デジタル資産 | ネット証券、暗号資産、電子マネー | サービス名、ログイン情報 |
財産目録の作り方を参考に、一覧表を作成しておくと相続手続きがスムーズになります。
2. エンディングノートに記録する
財産の棚卸しが済んだら、エンディングノートに書き残しておきましょう。男性が特に記録しておくべき項目は以下のとおりです。
- 金融・財産情報:棚卸しの結果を反映
- デジタル情報:パスワード管理ツールのマスターパスワード、重要アカウントの情報
- 医療の希望:延命治療や臓器提供への考え
- 葬儀の希望:家族葬か一般葬か、宗教・宗派
- お墓の希望:先祖代々の墓、永代供養、散骨など
- 家族へのメッセージ:普段言えない感謝の気持ち
「ノートを書く」という行為に抵抗がある方もいるかもしれません。しかし、エンディングノートは感傷的な手紙ではなく、家族のための実務的な情報整理ツールです。ビジネスで引き継ぎ資料を作るのと同じ感覚で取り組んでみてください。
3. デジタル遺品を整理する
男性の終活で特に重要なのが、デジタル遺品の整理です。デジタル終活とは、デジタルサービスやデータに関する生前の備えのこと。以下の手順で整理を進めましょう。
- 利用しているサービスの一覧を作成する:ネット銀行、証券、サブスク、SNS、クラウドストレージなど
- パスワード管理を一元化する:パスワード管理ツールを導入し、マスターパスワードを安全な場所に保管
- 不要なアカウントを解約する:使っていないサービスは退会しておく
- 死後のアカウント処理を設定する:GoogleやAppleの死後設定を有効にする
- 家族にアクセス方法を伝える:マスターパスワードの保管場所、スマホのロック解除方法
デジタル資産一覧テンプレートを活用すれば、漏れなく整理できます。
4. 家族と共有する
整理した情報を家族と共有することが、終活の仕上げです。しかし「終活の話をする」と構えると切り出しにくいもの。以下のようなきっかけを活用しましょう。
- 定年退職のタイミング:退職金の管理方法を伝えるついでに
- 保険の更新時期:見直し結果を共有するついでに
- 確定申告のタイミング:財産の全体像を整理するついでに
- テレビや記事がきっかけ:終活が話題になった時に自然に切り出す
ポイントは、「もしもの話」ではなく「情報共有」として伝えることです。「銀行口座の一覧を作ったから、ここに置いてあるよ」くらいの軽さで十分。家族にとってはそれだけで大きな安心材料になります。
5. 遺言書を検討する
以下に当てはまる方は、遺言書の作成を検討しましょう。
- 不動産を所有している
- 預貯金や有価証券の合計額が大きい
- 前妻との間に子どもがいる
- 事業用の資産がある
- 特定の相続人に多く渡したい
遺言書がなければ法定相続分に従った遺産分割協議が必要になり、家族間のトラブルにつながる可能性もあります。遺言書の書き方を確認し、必要性を判断してみてください。
年代別・男性の終活ポイント
男性の終活は、年代によって優先すべき項目が異なります。以下を参考に、自分に合ったペースで進めましょう。
| 年代 | 優先すべきこと | きっかけ |
|---|---|---|
| 40代 | デジタル情報の整理、保険の見直し、エンディングノートの下書き | 住宅購入、子どもの成長 |
| 50代 | 財産の棚卸し、退職後の生活設計、親の終活サポート | 役職定年、親の介護 |
| 60代 | 遺言書の作成、相続対策、葬儀やお墓の方針決定 | 定年退職、年金受給開始 |
| 70代以降 | エンディングノートの最終確認、介護・医療の意思表示 | 健康の変化、配偶者の体調 |
40代・50代の方は、まずデジタル情報と保険の整理から始めるのが現実的です。60代以降は、具体的な相続対策や葬儀の方針決定まで踏み込んでいきましょう。
年代別の終活ガイドもあわせて参考にしてください。
退職後が終活のベストタイミング
定年退職は、男性にとって終活を始める最大のチャンスです。時間ができるだけでなく、以下のような「整理すべきイベント」が重なるためです。
- 退職金の受け取りと運用先の決定
- 企業年金・確定拠出年金の手続き
- 健康保険の切り替え(組合健保から国民健康保険・任意継続へ)
- 名刺・仕事用メールアドレスの失効
- 通勤定期や社用カードの解約
退職金をどこに預けたか、運用に回したか——これらの情報を妻に伝えていない男性は少なくありません。退職の手続きと一緒に財産情報を整理し、エンディングノートに記録しておく習慣をつけましょう。
退職後の「居場所」をつくる
終活は財産やデジタルの整理だけではありません。退職後に社会との接点が減り、孤立してしまうことも、男性にとっては大きなリスクです。
- 地域のボランティア活動やサークルに参加する
- 趣味の仲間をつくる
- 自治体の終活セミナーに参加してみる
- 配偶者と一緒に外出する習慣をつける
人との接点を保つことは、認知症予防やフレイル予防にもつながります。終活セミナーの選び方で、近くのセミナーや相談先を探してみるのもよいでしょう。
そなえで終活の情報管理をもっと手軽に
「ノートに書くのは面倒」「紙だと紛失が心配」——そんな男性には、デジタルで情報を管理する方法がおすすめです。
そなえは、終活に必要な情報をスマートフォンやパソコンで一元管理できるサービスです。大きな文字で見やすく、操作もシンプルなので、デジタルが得意でない方でも使いやすい設計になっています。
- 財産情報やパスワードを安全に記録・管理
- 家族と必要な情報を共有できる
- 日時指定のビデオメッセージで、普段言えない気持ちを届けられる
- サブスクリプション不要の買い切り型なので、ランニングコストの心配なし
紙のノートと併用しても構いません。まずは一番気になっている項目から、記録を始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
- 男性の終活で最も重要なのは、自分名義の財産情報を家族がわかる状態に整えること
- デジタル遺品の整理は男性が主体的に取り組むべき分野——本人しかアクセスできない情報が多い
- 退職のタイミングは、財産整理とエンディングノート作成を始める絶好の機会
- 「終活の話」と構えず、「情報共有」として自然に家族に伝えることがコツ