終活コラム

在宅介護と施設介護の比較|費用・メリット・判断基準をわかりやすく解説

在宅介護と施設介護、どちらを選ぶべきか迷っていませんか。費用の目安、メリット・デメリット、選択の判断基準を具体的に比較。後悔しない介護の選び方を解説します。

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「親の介護が始まりそうだけど、自宅で介護すべきか、施設に入ってもらうべきか迷っている」——そんな悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。

在宅介護と施設介護、それぞれにメリットがあり、どちらが「正解」かは家庭の状況によって異なります。しかし、情報が少ないまま選択してしまうと、後から「もっと早く施設を検討すれば良かった」「こんなに費用がかかるとは思わなかった」という後悔につながることもあります。

この記事では、在宅介護と施設介護のメリット・デメリット、費用の目安、そして「どちらを選ぶべきか」の判断基準をわかりやすく解説します。

家族で介護の方針について相談するシニアと子どもたち

在宅介護と施設介護の基本的な違い

在宅介護と施設介護の最も大きな違いは、介護を受ける場所と介護を担う主体です。

在宅介護とは、自宅に居ながら介護サービスを利用して生活を続ける形式です。訪問介護やデイサービスなどを組み合わせ、ケアマネジャーが作成するケアプランに沿ってサービスを受けます。主たる介護者は家族であることが多く、プロのサポートを受けながら家族が中心となって介護にあたります。

施設介護とは、介護施設に入居して専門スタッフのケアを受ける形式です。特別養護老人ホーム(特養)や有料老人ホームなど、施設の種類はさまざまで、費用や入居条件も異なります。

どちらが本人や家族にとって良い選択かは、介護度・家族の状況・費用・本人の意思など、複数の要素を総合的に考える必要があります。

在宅介護のメリット・デメリット

在宅介護のメリット

住み慣れた環境で過ごせる

自宅は本人にとって最も安心できる場所です。長年暮らした家で過ごすことは、精神的な安定につながり、生活の質(QOL)を保ちやすいとされています。特に認知症の方にとって、慣れ親しんだ環境を維持することは症状の安定に寄与することがあると言われています。

家族との時間を保てる

施設入居と比べて、日常的な家族との接触が保ちやすくなります。孫の顔を見たり、家族で食事をしたりといった日常の豊かさを維持できます。

費用を抑えやすい(軽度の場合)

介護度が軽い段階では、在宅サービスの利用頻度が少なく、施設介護より費用を抑えられるケースがあります。介護保険の支給限度額内でサービスを組み合わせれば、自己負担を最小限に抑えることができます。

サービスの柔軟な選択ができる

訪問介護・デイサービス・ショートステイなど、必要に応じてサービスを組み合わせられます。家族のライフスタイルや本人の状態変化に合わせて、ケアプランを見直しながら対応していくことが可能です。

在宅介護のデメリット

家族への負担が大きい

在宅介護では、家族(特に同居家族)への身体的・精神的負担が大きくなりやすい傾向があります。夜間の介護が必要になると、睡眠不足や疲労の蓄積につながります。「介護離職」(介護のために仕事を辞める)が問題になるケースも少なくありません。

対応できる医療ニーズに限界がある

訪問看護を利用しても、24時間の医療対応は難しいケースがあります。医療依存度が高い方(気管切開・胃ろう・点滴管理など)の在宅介護は、家族への負担が特に大きくなります。

住環境の改修が必要になる場合がある

バリアフリー化のためのリフォーム(手すりの設置・段差の解消・浴室改修など)が必要になることがあります。介護保険には住宅改修費として最大18万円(1割負担の場合は1.8万円)の補助がありますが、大規模な改修では自己負担が発生します。

施設介護のメリット・デメリット

施設介護のメリット

専門スタッフが24時間対応してくれる

施設では介護士・看護師・リハビリ専門職などが常駐・待機し、夜間も含めて24時間対応できます。緊急時の対応や、医療的なケアが必要な場面でも安心して任せられます。

家族の介護負担が大幅に軽減される

施設に入居することで、家族が担っていた日常的な介護から解放されます。「介護で仕事を辞めずに済んだ」「自分の生活を取り戻せた」という声は、施設入居を選んだ家族から多く聞かれます。

社会的な交流の機会がある

施設では他の入居者やスタッフとの交流があり、在宅と比べて社会的なつながりを維持しやすい面もあります。レクリエーションや体操など、集団活動に参加できる機会もあります。

医療ニーズへの対応が充実している

施設によっては看護師が常駐し、インスリン注射・褥瘡処置・痰の吸引などの医療的ケアにも対応しています。在宅では難しい医療依存度の高い方でも受け入れられる施設があります。

施設介護のデメリット

費用が高くなりやすい

施設の種類にもよりますが、有料老人ホームでは月15〜35万円程度、特別養護老人ホームでも月8〜15万円程度が目安となります。長期にわたる入居費用は、家族の経済的な計画に大きな影響を与えます。

入居待ちが発生する場合がある

特別養護老人ホームは費用が比較的安いため人気が高く、入居まで数か月〜数年待つケースもあります。希望する施設にすぐ入れるとは限りません。

環境の変化による影響

住み慣れた自宅・地域を離れることは、本人に精神的なストレスを与える場合があります。特に認知症の方では、環境変化が症状を悪化させることがあるとも言われています。転居前の丁寧な準備と家族の関わりが重要です。

介護施設のスタッフが高齢者のリハビリをサポートしている様子

費用の比較:在宅介護 vs 施設介護

在宅介護と施設介護の費用を一覧で比較します。金額はあくまでも目安であり、地域・施設・介護度・利用サービスによって大きく異なります。

在宅介護の費用目安(月額)

サービス費用の目安(自己負担)
訪問介護(週3回程度)5,000〜15,000円
デイサービス(週2〜3回)8,000〜20,000円
訪問看護(週1〜2回)5,000〜12,000円
福祉用具レンタル1,000〜10,000円
ショートステイ(月数日)10,000〜30,000円

※介護保険の支給限度額内の自己負担(1割)での概算。要介護度や利用頻度により変動します。

施設介護の費用目安(月額)

施設の種類月額費用の目安入居条件
特別養護老人ホーム(特養)8〜15万円程度要介護3以上
介護老人保健施設(老健)10〜17万円程度要介護1以上(リハビリ目的)
グループホーム12〜20万円程度認知症の要介護1以上
介護付き有料老人ホーム15〜35万円程度施設による
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)12〜25万円程度施設による

長期的な費用の考え方

介護期間の平均は5〜10年と言われており、長期にわたる費用負担を見越した計画が必要です。在宅介護でも介護度が上がるにつれてサービス利用量が増え、費用が増加していくことも念頭に置いておきましょう。

費用の備えについては、終活の費用はいくらかかる?も参考に、介護費用を含めた全体的な資金計画を立てておくことをおすすめします。

どちらを選ぶべきか:判断基準5つ

在宅介護か施設介護かの選択に「正解」はありません。ただし、以下の5つの判断基準を整理することで、選択の方向性が見えやすくなります。

1. 本人の意思・希望

最も重要なのは、介護を受ける本人の意思です。「できる限り自宅で過ごしたい」という希望は、できる限り尊重されるべきです。一方で、本人が「家族に迷惑をかけたくない」「施設の方が安心」と考えるケースもあります。

元気なうちに「どこで介護を受けたいか」を家族で話し合っておくことが大切です。介護が必要になる前の準備でも触れているように、この話し合いを後回しにしないことが、いざというときの大きな助けになります。

2. 介護度(要介護認定の結果)

介護度は選択の重要な目安となります。

  • 要支援1〜2・要介護1〜2:在宅介護でのサービス利用が比較的しやすい段階
  • 要介護3〜4:在宅介護の限界が近づく。施設介護を本格的に検討するタイミング
  • 要介護5:医療依存度が高い場合も多く、施設介護が現実的な選択となるケースが多い

ただし、介護度だけで判断するのではなく、家族の状況や医療ニーズを合わせて考えることが大切です。

3. 家族の介護力

在宅介護では、家族の介護力が持続可能かどうかが重要なポイントです。

  • 同居家族がいるか
  • 近くに協力できる親族がいるか
  • 主たる介護者の就労状況・健康状態
  • 夜間の介護対応が可能か

「家族だから在宅で介護すべき」という思い込みは、介護者の燃え尽き(バーンアウト)につながる場合があります。施設介護を選ぶことは「家族を捨てる」ことではなく、本人と家族双方の生活の質を守るための選択です。

4. 医療ニーズ

医療依存度が高い場合は、施設介護の方が安心できるケースがあります。

医療ニーズが高い例:

  • 常時の酸素吸入や吸痰処置が必要
  • 胃ろうや経管栄養を使用している
  • 定期的なインスリン注射や点滴が必要
  • 褥瘡(床ずれ)の処置が必要

一方、訪問看護を活用することで在宅での医療ケアに対応できるケースも増えています。医療機関や介護事業者に具体的な相談をすることが大切です。

5. 経済的な状況

利用できる費用を現実的に把握し、長期的な継続可能性を確認しましょう。

  • 年金・預貯金・保険などの収入・資産の総額
  • 介護保険の支給限度額と自己負担割合
  • 高額介護サービス費制度(一定額を超えた自己負担は払い戻される制度)の活用

費用面では、介護保険の基本と申請手続きで解説している「高額介護サービス費」などの制度も知っておくと、実際の負担を減らす助けになります。

在宅介護で利用できる主なサービス

在宅介護を続けるためには、介護保険サービスを上手に組み合わせることが大切です。主なサービスを確認しておきましょう。

サービス名内容
訪問介護ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護・生活援助を行う
訪問看護看護師が自宅を訪問し、医療的ケア・健康管理を行う
デイサービス(通所介護)施設に通い、入浴・食事・リハビリなどを日帰りで受ける
ショートステイ(短期入所)一時的に施設に宿泊して介護を受ける。家族の休息にも活用できる
訪問リハビリテーション理学療法士・作業療法士が自宅でリハビリを実施する
福祉用具貸与車椅子・歩行器・特殊寝台など、必要な福祉用具をレンタルできる
住宅改修手すりの設置・段差解消などのリフォームに補助が出る(上限20万円)

これらのサービスはケアマネジャーが作成する「ケアプラン」に基づいて組み合わせます。自分でケアプランを作成することもできますが、無料で相談できるケアマネジャーに依頼するのが一般的です。

在宅から施設への移行を考えるサイン

最初は在宅介護で始めた場合でも、状況の変化により施設介護を検討するタイミングが訪れることがあります。以下のようなサインが続く場合は、早めに施設入居を検討し始めましょう。

  • 夜間の介護が必要になった(夜中に何度も起きる状態が続く)
  • 家族の介護者が体調を崩し始めた(腰痛・睡眠不足・うつ症状など)
  • 認知症による問題行動が増えた(徘徊・暴力・昼夜逆転など)
  • 医療的なケアのニーズが高まった(処置や投薬管理が複雑になった)
  • 本人が「施設に行ってもいい」と意思表示した

在宅介護と施設介護は二項対立ではなく、状況の変化に応じて柔軟に切り替えていくものと考えてください。ショートステイを定期的に活用しながら在宅介護を続けるという選択肢もあります。

そなえで介護の希望を家族に伝えておく

介護の選択を「いざそうなってから考える」ではなく、元気なうちに希望を整理しておくことが大切です。「そなえ」では、介護に関する希望や意思をデジタルエンディングノートに記録し、家族と共有することができます。

  • 在宅介護か施設介護かの希望
  • 入居を希望する施設の条件(場所・費用・雰囲気)
  • 介護してほしい人・頼りたい人の情報
  • かかりつけ医や服薬情報

これらの情報を事前に整理・共有しておくことで、いざという時の家族の迷いを大きく減らせます。エンディングノートの医療・介護の希望を参考に、ぜひ記録してみてください。

まとめ

在宅介護と施設介護、どちらが「正解」かは一概には言えません。本人の意思・介護度・家族の介護力・医療ニーズ・費用という5つの視点を総合的に判断することが大切です。

今すぐできることをまとめると、次の3点です。

  • 本人の希望を今のうちに確認する(どこで介護を受けたいか、施設についての考えを聞いておく)
  • 介護保険制度と利用できるサービスを把握する(在宅でもここまでサポートが受けられると知っておく)
  • 施設の情報収集は早めに始める(特養など待機が発生する施設は、必要になってからでは間に合わないことがある)

介護の選択は、家族みんなで考えるものです。元気なうちに話し合い、お互いの思いを理解し合っておくことが、いざという時の後悔のない選択につながります。

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