終活コラム

エンディングノートに書く医療・介護の希望|記入例つき

エンディングノートの医療・介護欄に何を書けばいいか迷っていませんか?延命治療・入院・介護の希望を具体的な記入例とともにわかりやすく解説します。

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「延命治療はどうしてほしい?」「介護が必要になったら、どこで過ごしたい?」——こうした問いに、あなたはすぐに答えられますか。

もし答えられない、あるいは家族に伝えていないとしたら、いざという時に家族が大きな負担を抱えることになります。意識を失った状態や判断能力が低下した場面で、医師から「どうしますか?」と問われた家族は、本人の意思がわからないまま重大な決断をしなければなりません。

エンディングノートの医療・介護欄は、そのような場面に備えて、自分の希望を書き残しておくための重要な項目です。この記事では、何をどう書けばいいかを具体的な記入例とともに解説します。

エンディングノートに医療・介護の希望を記入するシニア

なぜ医療・介護の希望を書き残すのか

緊急時は本人が意思表示できないことが多い

交通事故や脳卒中、心疾患など、緊急を要する医療場面では、本人が自分の意思を伝えられる状態でないことがほとんどです。意識不明や判断能力が著しく低下している状況で、医療の方針を決めるのは家族です。

そのとき、本人の希望が文字として残っていれば、家族は「本人の意思に従った」という確信を持って決断できます。逆に何も残っていなければ、「本当にこれで良かったのか」という迷いが長く続くことがあります。

医療現場では事前の意思表示が重視されている

厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の中で、本人の意思を尊重した医療の実施を推奨しています。日本医師会も同様の指針を設けており、事前に書き残された意思は医療現場でも参考にされる可能性があります。

エンディングノートに法的効力はありませんが、実質的な影響力は決して小さくありません

介護の方針を家族間で共有できる

介護が始まると、家族間で「在宅にするか施設にするか」「誰が主に関わるか」といった議論が起こりやすくなります。本人の希望が明確であれば、家族が自分たちの都合だけで判断するのではなく、「本人はこうしてほしいと言っていた」という軸を持って話し合えます。

家族に伝えておくべきことの中でも、医療や介護の希望は特に重要な項目のひとつです。

書くべき項目一覧

エンディングノートの医療・介護欄には、以下の項目を中心に記入しておくことをおすすめします。

カテゴリ記入項目
医療情報かかりつけ医・病院名、持病・既往歴、服用中の薬、アレルギー
延命治療心肺蘇生の希望、人工呼吸器の装着、胃ろう・人工栄養、緩和ケアの希望
最期の場所在宅・病院・ホスピスなど希望する療養・臨終の場所
臓器提供臓器提供の意思、提供を希望する臓器(または希望しない旨)
介護の希望在宅介護か施設介護か、希望する施設の種類
認知症への備え財産管理の方針、任意後見人の候補など

これらをすべて一度に記入しようとすると負担に感じるかもしれませんが、書ける項目から少しずつ埋めていくのがおすすめです。

医療情報の書き方と記入例

かかりつけ医・医療機関の情報

緊急時に最も役立つのが、医療機関の基本情報です。救急搬送された際、家族がかかりつけ医の連絡先をすぐ伝えられると、医師間の情報共有がスムーズになります。

記入例

かかりつけ医:田中内科クリニック 田中 健一 医師
電話:03-XXXX-XXXX
住所:東京都△△区〇〇 2-3-4

かかりつけ歯科:山本歯科
電話:03-XXXX-XXXX

持病・既往歴・服薬情報

アレルギーや服用している薬の情報は、医療処置において特に重要です。

記入例

持病:高血圧、2型糖尿病
既往歴:2018年 胆のう摘出手術
アレルギー:ペニシリン系抗生物質(アナフィラキシー歴あり)

服用中の薬:
・アムロジピン 5mg(血圧)
・メトホルミン 500mg(血糖)
※詳細はお薬手帳参照

薬の情報はお薬手帳でも管理できますが、エンディングノートにもメモしておくと緊急時に素早く伝えられます。

医師と患者が医療の希望について話し合う場面

延命治療の希望の書き方

延命治療についての意思表示は、エンディングノートの中でも最も書きにくい部分かもしれません。しかし、書いておくことで家族が最もつらい場面での迷いを減らせる、大切な項目です。

延命治療に関する主な選択肢

以下のような処置について、それぞれ「希望する」「希望しない」「家族に委ねる」のいずれかを書いておきます。

処置の種類内容
心肺蘇生(CPR)心停止時に胸骨圧迫・AEDなどで蘇生を試みる処置
人工呼吸器自力で呼吸できない場合に機械で呼吸をサポートする
胃ろう・経鼻チューブ飲み込めなくなった場合に管で栄養を補給する
中心静脈栄養血管から高カロリー輸液を点滴する栄養補給方法
透析治療腎機能が低下した場合に機械で血液を浄化する

記入例(延命治療を希望しない場合)

【延命治療について】
回復の見込みのない末期状態、または植物状態と医師が判断した場合、
以下の延命治療は希望しません。

・心肺蘇生(CPR):希望しない
・人工呼吸器の装着:希望しない
・胃ろう・人工栄養:希望しない

ただし、苦痛を和らげる緩和ケア・ホスピスケアは積極的に希望します。
痛みや不安を軽減する処置は行ってください。

記入例(家族の判断に委ねる場合)

【延命治療について】
具体的な処置については、その時の状況をもとに家族と担当医が
相談して判断してください。

ただし、苦痛が大きい状態での長期的な延命より、
できるだけ穏やかに最期を迎えることを望んでいます。

「希望する」「希望しない」の二択で書く必要はなく、自分の言葉で「こうしてほしい」という気持ちを書くことができます。完璧に整理できなくても、大まかな方向性を書き残しておくだけで十分です。

延命治療の意思表示についてはリビングウィルの書き方でより詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

介護の希望の書き方

在宅介護か施設介護か

介護が必要になった場合、大きく「自宅で介護を受ける(在宅介護)」か「施設に入居する(施設介護)」という選択肢があります。

記入例(在宅を希望する場合)

【介護の希望】
できる限り自宅で過ごしたいと思っています。
家族に負担がかかりすぎる場合や、在宅での対応が難しくなった場合は、
施設への入居も検討してください。

記入例(施設入居を希望する場合)

【介護の希望】
家族に介護の負担をかけたくないので、
必要になったら早めに施設への入居を検討してください。
費用的に可能であれば、個室のある施設を希望します。

「家族に迷惑をかけたくない」という思いから施設を希望する方も少なくありません。逆に「住み慣れた家で最期まで」という思いも大切です。どちらが正解ということはなく、自分の気持ちを正直に書くことが重要です。

認知症になった場合の備え

認知症が進行すると、本人が意思決定できなくなります。その場合の対応方針を書いておくと、家族の判断の助けになります。

記入例

【認知症になった場合】
判断能力が低下した場合に備えて、任意後見人として長男に
代理権を委任することを検討しています。(公証役場での手続き予定)

財産管理や施設の入退居については、長男と次女が相談して
決めてもらえると安心です。

認知症への備えについては認知症になった場合の備えでさらに詳しく解説しています。

最期の場所と臓器提供について

最期を迎えたい場所

療養・臨終の場所について希望がある方は、書き残しておきましょう。

記入例

【最期の場所について】
できれば自宅で、家族に囲まれて最期を迎えたいと思っています。
自宅での対応が難しければ、緩和ケア病棟(ホスピス)を希望します。
救急病院での延命を最優先にはしないでください。

臓器提供の意思表示

臓器提供については、健康保険証や運転免許証にも記載欄がありますが、エンディングノートにも記しておくと家族に伝わりやすくなります。

記入例(提供を希望する場合)

【臓器提供について】
臓器提供を希望します。
角膜・腎臓・心臓など、使えるものは提供してください。

記入例(提供を希望しない場合)

【臓器提供について】
臓器提供は希望しません。
遺体は原形のままにしてほしいという気持ちから、このように決めました。

エンディングノートに書く医療・介護の希望——まとめチェックリスト

記入後に以下の項目を確認してみましょう。

  • かかりつけ医・病院名と連絡先が書かれている
  • 持病・既往歴・アレルギーが記入されている
  • 服用中の薬が一覧になっている(またはお薬手帳の保管場所を記載)
  • 延命治療についての大まかな意向が書かれている
  • 最期を過ごしたい場所の希望がある
  • 臓器提供についての意思が記入されている
  • 介護の希望(在宅・施設)が書かれている
  • 認知症などで判断できなくなった場合の対応方針がある

すべて書く必要はありませんが、「かかりつけ医の情報」と「延命治療への意向」だけでも書いておくと、緊急時に大きく役立ちます

エンディングノートの書き方の記事では、医療・介護以外の項目(財産・連絡先・葬儀の希望など)の書き方も解説しています。あわせて参考にしてみてください。

そなえで医療・介護の希望をデジタルに整理する

「そなえ」では、エンディングノートの医療・介護欄をデジタルで記録・管理できます。

  • かかりつけ医や服薬情報を項目ごとに整理して入力できる
  • 延命治療・介護の希望を自分の言葉で自由に記録
  • もしもの時に、指定した家族へ自動で届く仕組み
  • スマホからいつでも内容を更新できるので、病状の変化や考えの変化にも対応できる

紙のノートだと書き直しが大変ですが、デジタルなら気が変わっても簡単に更新できます。

まとめ

エンディングノートの医療・介護欄は、自分の意思を家族に届けるための最も具体的な準備です。

まずは以下の3点から書き始めてみることをおすすめします。

  • かかりつけ医と服薬情報(緊急時にすぐ役立つ)
  • 延命治療への大まかな意向(「苦しい延命は望まない」でも十分)
  • 介護の希望(在宅か施設か、家族への気持ちを添えて)

完璧に書き上げようとせず、少しずつ書き足していけばよいのです。書いたら、信頼できる家族に「こういうことを書き残してあるよ」と伝えておきましょう。

エンディングノートに書く医療・介護の希望|記入例つき