「親が亡くなったあと、遺産をどう分ければいいの?」「遺産分割協議書って自分で書けるの?」——相続が発生すると、多くの方が初めて直面する手続きのひとつが遺産分割協議書の作成です。
遺産分割協議書とは、相続人全員が遺産の分け方について話し合い、合意した内容を正式な書面にまとめたものです。不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなど、多くの相続手続きで提出を求められます。
この記事では、遺産分割協議書の書き方をひな形つきで解説し、必要書類や作成時の注意点までわかりやすくまとめました。
遺産分割協議書とは?なぜ必要なのか
遺産分割協議書とは、被相続人(亡くなった方)の財産を「誰が・何を・どのくらい」受け取るかを、相続人全員で話し合って決めた結果を記録する文書です。
遺言書がある場合は原則としてその内容に従いますが、遺言書がない場合には、相続人全員の合意による遺産分割協議が必要になります。この協議の結果を書面にしたものが遺産分割協議書です。
遺産分割協議書が必要になる場面
遺産分割協議書は、以下のような場面で提出を求められることが一般的です。
| 手続き | 提出先 |
|---|---|
| 不動産の名義変更(相続登記) | 法務局 |
| 預貯金の払い戻し・口座解約 | 金融機関 |
| 有価証券の名義変更 | 証券会社 |
| 自動車の名義変更 | 陸運局 |
| 相続税の申告 | 税務署 |
つまり、遺産の中に不動産や預貯金がある場合には、ほぼ確実に遺産分割協議書が必要になると考えておきましょう。
遺産分割協議書を作成する前の準備
遺産分割協議書を作成する前に、以下の3つの準備を済ませておくことが大切です。
1. 相続人を確定する
遺産分割協議には、法定相続人全員の参加が必要です。一人でも欠けると協議は無効になります。
相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得し、法定相続人を漏れなく特定します。前婚の子どもや認知した子どもがいないかも確認する必要があるため、戸籍調査は丁寧に行いましょう。
2. 遺産の全体像を把握する
協議を進めるためには、何がどれだけあるのかを正確に把握する必要があります。
- 不動産:登記事項証明書で所在地・面積・評価額を確認
- 預貯金:各金融機関に残高証明書を請求
- 有価証券:証券会社に取引残高報告書を依頼
- 生命保険:受取人指定のものは原則として相続財産に含まれない
- 負債:借入金やローンの残高も忘れずに確認
相続の準備チェックリストも参考にしながら、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含めて洗い出しましょう。
3. 必要書類を集める
遺産分割協議書の作成と、その後の手続きで必要となる書類は以下のとおりです。
| 書類 | 取得先 | 備考 |
|---|---|---|
| 被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | 相続人の確定に必要 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | 現在のもので可 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 各相続人の住所地の市区町村役場 | 発行から3〜6か月以内のもの |
| 不動産の登記事項証明書 | 法務局 | 不動産がある場合 |
| 固定資産評価証明書 | 市区町村役場 | 相続登記の登録免許税計算に使用 |
| 預貯金の残高証明書 | 各金融機関 | 死亡日時点のもの |
戸籍謄本の収集は時間がかかることが多いため、早めに着手することをおすすめします。
遺産分割協議書の書き方とひな形
遺産分割協議書に法律で定められた書式はありませんが、相続手続きで有効に使うためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
記載すべき項目
遺産分割協議書には、最低限以下の情報を記載します。
- 被相続人の情報:氏名、生年月日、死亡日、最後の住所、最後の本籍
- 相続人全員の合意があることを示す一文
- 遺産の具体的な内容と分割方法:誰が何を取得するかを明記
- 後日判明した財産の取り扱い:記載漏れの場合の対応方針
- 作成日
- 相続人全員の住所・氏名・実印の押印
ひな形の例
以下は、一般的な遺産分割協議書のひな形です。実際に使用する際は、ご自身の状況に合わせて内容を調整してください。
遺産分割協議書
被相続人 山田太郎(昭和〇年〇月〇日生) 死亡日 令和〇年〇月〇日 最後の住所 東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号 最後の本籍 東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番
上記被相続人の遺産について、共同相続人全員で協議を行った結果、次のとおり遺産を分割することに合意した。
1. 次の遺産は、山田花子が取得する。
【不動産】 所在 東京都〇〇区〇〇町〇丁目 地番 〇番〇 地目 宅地 地積 〇〇.〇〇平方メートル
(同所所在の建物) 家屋番号 〇番〇 種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建 床面積 1階 〇〇.〇〇平方メートル、2階 〇〇.〇〇平方メートル
2. 次の遺産は、山田一郎が取得する。
【預貯金】 〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
3. 本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人全員で別途協議のうえ、その帰属を定める。
以上のとおり、相続人全員の合意が成立したので、これを証するため本協議書を〇通作成し、各自1通を保有する。
令和〇年〇月〇日
住所 東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号 氏名 山田花子 ㊞
住所 東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号 氏名 山田一郎 ㊞
書き方の注意点
- 不動産は登記事項証明書の記載どおりに:所在・地番・地目・地積を正確に転記しましょう。住所表記(住居表示)ではなく登記上の所在を使います
- 預貯金は金融機関名・支店名・口座番号を正確に:残高は死亡日時点のものを記載するのが一般的ですが、利息の変動があるため「〇〇銀行〇〇支店の普通預金口座のすべて」という書き方も可能です
- 署名は必ず自署、押印は実印で:認印では金融機関の手続きが進まない場合があります。印鑑証明書とセットで提出するのが通常です
- 協議書は相続人の人数分を作成:各自が1通ずつ保管します
よくあるトラブルと防ぎ方
遺産分割協議で問題が起きやすいパターンを知っておくと、事前に対策が立てやすくなります。
相続人の一部が連絡を取れない
行方のわからない相続人がいると、協議を進められません。家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てるか、戸籍の附票から現住所を調べる方法があります。
不動産の評価額で意見が分かれる
不動産は評価方法によって金額が大きく変わります。固定資産税評価額、路線価、実勢価格(時価)など複数の基準があるため、どの基準を使うかを事前に話し合っておくことが重要です。
協議がまとまらない場合
話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停でも解決しない場合は審判に移行し、裁判官が分割方法を決定します。
相続トラブルを防ぐ生前対策の記事でも、争族を防ぐためのポイントを解説していますので、あわせてご覧ください。
遺産の申告漏れに注意
遺産の調査が不十分なまま協議書を作成すると、後日新たな財産が見つかった場合に再度協議が必要になります。「後日判明した財産の取り扱い」の条項を必ず入れておきましょう。
遺産分割協議書と相続登記の関係
2024年4月から相続登記の義務化がスタートしました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければ、正当な理由がない限り10万円以下の過料が科される可能性があります。
不動産の相続手続きにも詳しくまとめていますが、相続登記を申請する際には遺産分割協議書が必要です。法務局には以下の書類を提出します。
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印を押印したもの)
- 被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
- 不動産を取得する相続人の住民票
- 固定資産評価証明書
相続登記の手続きは自分でもできますが、不安がある場合は司法書士への依頼を検討しましょう。
専門家に依頼すべきケース
遺産分割協議書は自分で作成することもできますが、以下のような場合は専門家への相談をおすすめします。
| ケース | 相談先 |
|---|---|
| 不動産が複数ある、または評価額が高い | 司法書士・税理士 |
| 相続人が多い、または関係が複雑(再婚・養子縁組など) | 弁護士 |
| 相続税の申告が必要 | 税理士 |
| 相続人間で意見の食い違いがある | 弁護士 |
| 協議書の書き方に不安がある | 行政書士・司法書士 |
費用の目安としては、行政書士や司法書士への依頼で3〜10万円程度が一般的と言われています。弁護士の場合はケースの複雑さに応じて費用が変わりますので、事前に見積もりを取ると安心です。
そなえで相続の情報を整理しよう
遺産分割協議をスムーズに進めるためには、生前から財産情報を整理しておくことが何より大切です。
「そなえ」は、終活に必要な情報をデジタルで安全に管理できるサービスです。
- 預貯金・不動産・保険などの資産情報を一か所にまとめられる
- もしもの時に、指定した家族へ大切な情報が届く仕組み
- エンディングノートと合わせて、相続に必要な情報を漏れなく準備
生前に財産の一覧を整理しておくだけで、残された家族が遺産分割協議を進める際の大きな助けとなります。
まとめ
遺産分割協議書は、相続手続きを進めるうえで欠かせない重要な書類です。相続人の確定と遺産の調査をしっかり行い、全員の合意を書面に残しましょう。
不動産の記載は登記どおりに正確に、署名は自署・押印は実印で。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停という選択肢もあります。
大切なのは、生前から相続の備えを進めておくこと。相続の準備チェックリストを活用して、家族が困らない準備を少しずつ始めていきましょう。